睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりすることにより、日常生活にさまざまな障害を起こす疾患です。SASには、いびきが存在する閉塞性睡眠時無呼吸(OSAS)と、呼吸の機能が働かない中枢性睡眠時無呼吸(CSAS)があります。最もよくみられる病態はOSASです。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)について
閉塞性睡眠時無呼吸(OSAS)の主な症状
- いびき
- 睡眠中の呼吸停止、あえぐような激しい呼吸
- 日中の眠気
- 倦怠感、頭が重い
- 夜中に何度もトイレに起きる
閉塞性睡眠時無呼吸(OSAS)の病態
睡眠時に、空気の通り道(気道)が塞がる、または狭くなるため無呼吸を生じます。通常、誰でも仰向けで寝ると、重力により舌や軟口蓋が落ち込み気道が狭くなります。狭くなった気道を空気が通るときに生じる振動音が「いびき」です。
さらに、舌根や軟口蓋などが完全に落ち込み気道が塞がれると、呼吸をすることができなくなり無呼吸になります。
肥満(舌が重い、首が太い)、筋力低下(加齢)、あごが小さい、首が短い、扁桃肥大、口呼吸をしているなどの理由で気道が塞がります。
閉塞性睡眠時無呼吸(OSAS)の合併症
OSASになると、無呼吸状態での少ない酸素を全身に送るため、心臓や血管に負担がかかります。この状態が長く続くと、さまざまな生活習慣病の合併症を引き起こす可能性があります。
OSASの患者では、脳卒中は3.5倍、高血圧は2.1倍、心不全は4.3倍、2型糖尿病は2.3倍、虚血性心疾患は2.5倍、不整脈は3.2倍発症リスクが増加します。
(Eur Respir J. 2016(4):1162-1169)
心不全患者は、そのうち76%の方がOSASを合併しているといわれています。
また、OSASによる日中の眠気のために、交通事故や災害事故を起こす危険が高くなります。OSAS患者さんでは、一般ドライバーに対して交通事故の発生率が2.4倍と多いです。しかし、CPAP治療により一般人の事故率と同等になります。
(J Clin Sleep Med. 2009;5(6):573-581)(Sleep. 2010;33(10):1373-1380)
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の有病率
50歳代の女性で10%弱、男性で10~20%程度とされています(AHI≧15)。肥満傾向にある40~60歳代の男性に多く、女性では閉経後に増加していきます。
肥満でなくても閉塞性睡眠時無呼吸(OSAS)を発症する
治療が必要とされる方のうち、30%は肥満を伴っていない(BMIが25%未満)という報告があります。日本人は肥満でなくても、顔面の形態的問題からOSASを発症しやすいといわれています。
睡眠時無呼吸(SAS)の検査・診断のながれ
簡易モニター検査
指先の酸素センサーと鼻の呼吸センサーをつけて睡眠します。簡易検査でAHI≧40/hrであれば、CPAP治療の適応と診断されます。
(AHI:無呼吸低呼吸指数)
終夜ポリソムノグラフィ(PSG)
簡易検査でAHI<40/hrの場合、PSG検査を行います。睡眠中の脳波、心電図、呼吸、眼球運動を測定するため、簡易検査より多くのセンサーをつけて精密検査を行います。
PSGの検査結果に応じて治療方針を判断します。
簡易検査の結果 | 治療について |
---|---|
AHI≧20/hr | CPAP治療 |
5/hr≦AHI<20/hr | 自覚症状があれば口腔内装置を検討、自覚症状がなければ経過観察 |
AHI<5/hr | SASでない可能性が高い |
※CPAP、口腔内装置が使用できない患者様は、手術について相談します。
CPAP治療(持続陽圧呼吸療法)
CPAP治療とは、CPAP装置からホース、マスクを介して空気を起動に送り、睡眠中に圧力をかけて気道を開く治療法です。睡眠中の無呼吸やいびきが減少し、熟睡感が得られて目覚めがすっきりします。治療により、高血圧や心血管疾患のリスクの改善も報告されています。
CPAP治療は、検査結果が基準(AHI)を満たせば健康保険の適用になります。その場合には、定期的な外来受診が必要になります。
参考
「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」
監修:日本呼吸器学会 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「難治性呼吸器疾患・肺高血圧症に関する調査研究」班